2024年12月17日火曜日

Laplacian Smoothing キット

 Laplacian SmoothingキットをGithubで公開しました。Laplacian Smoothingは、データ平滑化のアルゴリズムの手法で、主に形状データの局所的なノイズを抑え、滑らかな形状にする特徴があります。頂点の位置を、その点に隣接する点の平均位置に向かって少しずつ移動させることで、表面を平滑化します。

Laplacian Smoothingのプラグインを作るにあたり、オープンソースのジオメトリ処理ライブラリのlibiglを使用いたしました。libiglは、シンプルかつ高機能なオープンソースのC++ジオメトリ処理ライブラリで、ヘッダーをインクルードしてプロジェクトをビルドすることができます。今回使用したLaplacian以外にもModoの機能に組み込んだら面白そうな興味深い機能がたくさんあります。今回はlibiglを使ったプラグインを利用して作るプロジェクトの練習のつもりで作りました。Pythonから利用可能なライブラリも用意されているようです。多くの計算処理をEigenを使って行っていますのでEigenの使い方さえマスターできれば簡単に利用できそうです。

Modoの標準のスムースツールは、汎用的でかつマルチタスキングを使って高速化されていますので、多くの場面では標準のスムースツールを使用することができます。今回のLaplacian Smoothingを使うと局所的なディテールが徐々に平滑化したい場合などで有効な方法だと思います。下記はLaplacian SmoothingのStrengthを0.0, 1.0, 2.0に変えてスムージングを行った例です。足先のディテールが徐々になくなっていきます。

 Stength = 0.0
 Strength = 1.0
 Strength = 2.0

下記はModoのスムージングの例です。全体的に一様に平滑化されていますが足先のディテールはそのまま残っています。


このライブラリのLaplacianを使って気がついたのは、平滑化の処理を対して行うと全体に形状がシュリンクしてしまうことです。このプラグインではオリジナルの形状の境界ボックを保存し、平滑した結果がその境界ボックスにフィットするようにスケールを掛けています。形状の表面積に基づいてスケールファクターを求めるなどの考え方もあります。この辺りは実用性を考えながら改善の余地がありそうです。

また、この計算処理は一度のスムージング処理で平滑化が大きく変化するという特徴もあります。上記のStrengthは、実際には平滑化処理を0回、1回、2回掛けた結果です。中間的な調整がやり難いのでこのプラグインでは、処理回数をStrengthとして浮動小数点数に変更し、処理回数の中間値を線型補完するようにしています。Modoのフォールオフにも対応しています。








2024年12月10日火曜日

CDT Triangulation キット

 標準の三角形分割の機能よりも品質の良い三角形を生成するCDT TriangulationキットをGitHubにリリースしました。以前からModoのアルファテスターの方々からModoの三角形分割のアルゴリズムを改善してほしいとの要望がありました。将来リリース予定のModoで実装する準備をしていたのですが、開発が中止になりましたので、オープンソースのライブラリを利用してModoのプラグインの形式で作り直すことにいたしました。コマンド版とメッシュオペレータ形式の2つがキットに含まれています。

今回実装した三角形分割は、制約付きドロネー三角形分割(Constraint Delaunary Triangulation)というアルゴリズムを使っています。 制約付きドロネー三角形分割は、ドロネー三角形分割に元のポリゴンエッジを必ず使用するという制約を付加したもので、多くのアプリケーションで広く使われています。

CDT三角形分割を実現するModoのプラグインを実装するにあたり、今回はartem-ogreさんが、Githubで公開しているCDTのオープンソースライブラリを利用させていただきました。このライブラリの実装はとても堅牢で、外ループに加えて、穴を表現する内ループも任意に追加することができるので便利です。

Modoの場合、鍵穴ポリゴン(Keyhole Polygon)と読んでいるちょっとイレギュラーなポリゴンを許容しているので、これを外ループと内ループに分解してCDTに三角形分割させることができました。鍵穴ポリゴンは、外ループと内ループを繋ぐ双方向のブリッジエッジを持つポリゴンで、四角形をそれよりも小さい四角形を使って軸ドリルをすると内と外を繋ぐエッジを持った穴の空いたポリゴンができます。これが鍵穴ポリゴンで、穴のあるテキスト文字をフリーズした時に生成されます。たとえば「虫」という文字をフリーズすると双方向のエッジが二つ追加された一筆書きの一つのポリゴンが生成されます。ポリゴンの頂点リストに同じ頂点が複数存在するポリゴンなので、Modoのモデリングツールはこのような特殊なポリゴンもサポートする必要があるので注意が必要です。他の3DCGアプリケーションでは、エラーになりそうな気がしますので、他のファイル形式に出力する際には三角形分割などして対応した方が良さそうです。

下記はModoの標準の三角形分割コマンドで上記のポリゴンを分割した結果(上)とCDTで分割した結果(下)の比較です。明らかにCDTで生成した三角形の方が正三角形に近いきれいな三角形が生成されています。



あるユーザーさんから、CDT以外にも有限要素法などで使われているポリゴンの内部に頂点を追加し、内部に三角形を密集するタイプの適応型ドロネー三角形分割もサポートできないかというリクエストをいただきました。これはまた今後の研究で考えてみたいと思います。


2024年12月1日日曜日

Blender LXO Importer

ModoとBlenderを組み合わせて使用するワークフローをよく耳にするようになりました。ModoとBlenderとのシーンデータのやり取りで便利そうなBlenderのアドオンがDiscordのModoチャンネルで話題になっています。 

rockjailさんのio_scene_lxoは、ModoのLXOシーンファイルをBlenderから直接読み込むためのアドオンで、githubにてフリーで公開されています。rockjailさんは、元々LXOファイルを読み込むためのパーサーをPythonプログラムとして公開されていたようで、io_scene_lxoはこのパーサーを利用して作成されているようです。

まだ、開発中(EXPERIMENTAL)とのことですが、下記のようなデータをBlenderに読み込むことができるようです。

  • メッシュデータ(UVマップ、マテリアルタグをサポート)
  • カメラ
  • ライト (スポット, エリア, 指向性, 点光源)
  • ロケータのトランスフォーム
  • その他ロケータタイプのアイテム
  • アイテムの親子構造
  • 座標系に関するオプション


インストールはio_scene_lxoのCodeプルダウンメニューからDownload.zipを選択してディスクに保存。このZIPファイルはそのままBlenderのアドオンファイルとしてインストールできますので、BlenderのPreferenceからAdd-onsの右上にあるInstall from Disk...からダウンロードしたZIPファイルを選択すれば完了です。BlenderのFileメニューのImportからModo Object (*.lxo)が選択できるようになっているはずです。


試しにUVマップを持つ、サブディビジョンサーフェイスモデルを読み込んでみました。サブディビジョンサーフェイスは、Subsurfモディファイヤーとして読み込まれています。EyeとFaceのUVマップも正しく読み込まれているようです。


次に親子関係の階層構造を持つ、モデルを読み込んでみました。ModoのContentに含まれているRobodog-Anim.lxoを読み込んでみました。Robodogの階層構造は再現されているようですが、シーンのZ軸がY軸と入れ替わっているようです。ImportのForwardとUpオプションを変更してみましたが、Pythonのエラーが表示されたため、これはうまく修正できませんでした。



まだ、少し制限があるようですが、ModoでモデリングとUV編集をしたモデルをBlenderに読み込むワークフローであれば、便利に使えそうです。