Modo 701では、主にマルチレゾリューションメッシュのスカルプティングに改善が行われました。まず、最初の変更は処理速度の向上です。Modo 701では、いろいろな分野で処理速度の改善が行われていますが、スカルプティングの処理速度も601と比較してもらうと飛躍的に改善されていることが体感できる思います。
Modo 701では、マスク機能もサポートされています。通常、スカルプトしたくない場所を指定する場合は、対象となるポリゴンを非表示にしたり、ロックしてスカルプトツールが編集できないようにすることがいままでの方法ですが、マスク機能を使うと編集したくない場所をマイクロポリゴンのポイント単位でウェイトとして指定することが可能です。マスクの指定は、スカルプトツールメニューバーのMaskにあるツールを使ってペイントしたり、コマンドで操作することが可能です。Bake Falloffはマイクロポリゴンのポイントに対して指定したディスプレースメントの値もしくはマスクの値を数値で設定するコマンドです。Lassoなどのフォールオフを使用して値を設定する領域を限定することが可能です。
その他の便利なコマンドにConvert to Multiresolutionがあります。UtilitiesタブのSculpt Commandsに追加されているコマンドです。これはテクスチャベースのディスプレースメントマップをマルチレゾリューションメッシュに変更するコマンドです。テクスチャに記録されているディスプレースメントは浮動小数点形式のTIFFやOpenEXRなどの画像に保存されておりUVマップを基準にサーフェイス上にマッピングされています。Convert to Multiresolutionは、画像ファイルに保存されているディスプレースメントの情報を対応するマイクロポリゴンの位置にコピーします。変換時にはマルチレゾリューションのサブディビジョンレベルを手動で設定します。マルチレゾリューションとテクスチャとでは解像度の概念がことなりますので、完全にディーテールを復元することはできませんが、サブディビジョンレベルを大きくすることで誤差を少なくすることができます。MARIやZBrushなどの別アプリケーションで作成したテクスチャーベースのディスプレースメントをmodoのマルチレゾリューションに変換することが可能になります。
また、コピーアンドペーストするポリゴンの選択ルールを細かく初期設定パネルで指定することも可能になりました。modo 601でポリゴンを幾つか選択してコピーし、直ぐにペーストを行うと元のポリゴンとペーストしたポリゴンの両方が選択されてしまうため、移動ツールを使用してペーストしたポリゴンだけを直ぐに移動したい場合、元のポリゴンまで一緒に動いてしまうのが操作の邪魔でした。初期設定パネルで”Deselect Elements after Copying”にチェックを入れておくとコピー後に元ポリゴンは直ぐに解除されるため、ペースト後は新しくペーストポリゴンだけが選択状態になります。また、ペーストを行ったタイミングで元ポリゴンの選択を解除したい人は、"Deselect Elements before Pasting"の方で試してみてください。これによりペーストしてから直ぐに移動ツールで新しくペーストしたポリゴンを動かすことが可能になります。
modo 601では、大幅にアニメーション機能が強化され、フルタイムIKエンジン、デフォーメーションシステムが搭載されたことにより、キャラクターアニメーションの制作のワークフローが提供されました。modo 601リリース後にアニメーションに関する機能要望で一番多かったのがオーディオのサポートです。modoは、3DCGツールですので高機能なオーディオ編集機能は必要ありませんがオーディオにあわせてアニメーションを作成するためには最低限アニメーションの再生にあわせてオーディオを再生する必要があります。modo 701では、ネイティブにオーディオデータを取り扱うことができるように大幅にアップデートが行われました。
modo 601リリース後、modo 601上でオーディオを再生することができるAudio ApeというプラグインをCelfさんというmodoユーザーの方が開発し、公開してくれています。Audio Apeは、modo 701とプラグインの互換性の問題で衝突するらしく、modo 701で起動したときはプラグインが無効になる新しいバージョンが公開されているようです。
Trim StartとDurationを使ってオーディオクリップの頭出しと全体の長さを調整することができます。これはクリップ自身の再生開始位置と長さの調整ですので、アニメーションのタイムライン上にクリップを配置し、タイムライン上のどのいちから再生するかは、Audioボタンを押して表示されるポップアップメニューで再生位置を設定します。配置したクリップを繰り返し再生する設定もここで行います。
プリセットワークフロー
modo 701では、プリセットの作り方が簡単になりました。シェーダツリーからマテリアルをドラッグしてプリセットブラウザにドロップするとそのマテリアルのプリセットが自動的に作成されます。このプリセットのサムネイル画像は、プリセットブラウザ上で右ボタンを押して表示されるコンテキストメニューにあるReplace Icon with Image...を使って任意の画像に入れ替えるか、Replace Icon with Last Renderを使って最後にレンダリングした画像と入れ替えることができます。
modo 701の機能を紹介するサイトMODO 701 Tourが既にLuxology.comに公開されていますが、このブログでも今回のアップグレードの概要を解説したいと思います。modo 601では、デフォーメーションエンジンの搭載やキャラクターアニメーション機能の搭載など派手な機能追加が目立っていましたが、modo 701ではmodo 601で搭載された機能のワークフローを精査し、より完成度を高くするための改善や機能追加が行われました。
パーティクルシミュレーション
modo 701のハイライトといえるのが、新しく搭載されたパーティクルシミュレーションです。パーティクルの機能は、modo 601にも搭載されていましたが、modo 701ではエミッターなどダイナミックにパーティクルを生成するシミュレーションエンジンが搭載されました。ライブシミュレーション機能を使っていろいろな方法でパーティクルを発生させることができます。また、modo 601で組み込まれたダイナミクスエンジンとシームレスに連携させることができるのもmodoのパーティクルシミュレータの特徴です。新しいインフラが追加されるたびに既存の機能との連携が行えるようになるのがmodoの強みだと思います。パーティクルのスカルプティングやメッシュへの変換なんかもできちゃいます。
Python API
701ツアーの紹介ページでは、ほとんど解説されていませんが、Pythonスクリプトのインタープリタが大幅に強化されています。modoのコマンドライン版であるmodo_clに-console:pythonという引数をつけて起動すると、Pythonのコンソールとしてmodoを使用することができるようになります。また、従来SDKでしかアクセスできなかったストレージオブジェクトの機能もPythonから利用できるようになりましたので、画像データのピクセルデータなどにもアクセスできるようになりました。非常に強力です。
アニメーションワークフローの強化
modo 601では、フルタイムIKエンジンとデフォーメーションエンジンが搭載され、キャラクターアニメーションの制作が可能になりました。modo 701では、更にこのアニメーションのワークフローを見直し、アニメーション作業レイアウトの大幅な変更、オーディオサポート、タイムツールやモーションパスの編集機能の追加が行われています。中でもインタラクティブに親子関係を変更することができるダイナミックペアレンティングやポーズツールのダイナミックピニングの機能の使い勝手は絶品です。